ちょい掘りMotoGP|記事で見るあの単語…「囲み取材」とは?

MotoGPの「囲み取材」について説明します。
伊藤英里 2026.01.17
誰でも

GPジャーナルの記事でも度々出てくる単語、「囲み取材」について説明したいと思います。

わたしは主に現地で取材した記事を書くので、基本的にそのライダーのコメントがどこで発せられたものなのかを明記します。「イタリアGPのプレスカンファレンス」や「バレンシアGPの囲み取材」などのように、です。というわけで、GPジャーナルでは、よく「囲み取材」という単語が出てくると思います。

今回の記事を書くにあたり、「囲み取材」という単語が一般的なのかを調べてみました。しかし、わたしが持っている電子辞書に、その単語は載っていませんでした(精選版日本国語大辞典、広辞苑、明鏡国語辞典、新明解国語辞典)。インターネットでも調べてみましたが、辞書には載ってはいないようです。「囲み取材」はいわゆる業界用語になるのでしょう。それならばなおさら、説明しなければならないと思います。

©Eri Ito

©Eri Ito

木曜日から日曜日、各日に全ライダーの囲み取材が行われる

MotoGPにおける「囲み取材」とは、レースウイークに、時間と場所を決めてライダーが行うメディア対応のことです。

現在のMotoGPクラスでは、基本的に木曜日から日曜日にかけて、全ライダーの囲み取材が設定されています。木曜日は走行がないので、昼頃から始まり、夕方に行われるプレスカンファレンス前には終了します。プレスカンファレンスに出席するライダーは、囲み取材はありません。メディアはプレスカンファレンスで質問できるからです。なお、Moto2、Moto3ライダーの囲み取材は設定されていません。取材したい場合は、ライダーを探して対応してもらいます。

金曜日以降は、1日の終わりに囲み取材が行われます。金曜日なら午後のプラクティス終了後、土曜日ならスプリントレース後、日曜日なら決勝レース後です。日曜日も、木曜日と同じように、トップ3プレスカンファレンスに出席するライダーの囲み取材はありません。というわけで、2025年シーズン、参戦した18戦中15戦の決勝レースでトップ3を獲得したマルク・マルケスの日曜日の囲み取材は少なかったです。

ライダーによってはレース後すぐ、レーシングスーツ姿のまま囲み取材にやって来る選手もいる©Eri Ito

ライダーによってはレース後すぐ、レーシングスーツ姿のまま囲み取材にやって来る選手もいる©Eri Ito

言語は基本的に英語と母国語

囲み取材は、基本的に英語とライダーの母国語で行われます。小椋藍選手なら、英語の囲み取材と日本語の囲み取材、という具合です。わたしの場合、日本人ライダー以外は英語の囲み取材で取材を行っています。時間は、基本的に各言語5分です。

イレギュラーですが、過去にはカタラン語の囲み取材対応をしたスペイン人ライダーもいました。カタラン語はスペインのカタルーニャ地方を中心に話されているスペイン語とは異なる言語です。

囲み取材はどこで行われる?

わたしがMotoGPを現地取材し始めた2019年は、まだ囲み取材はチームのホスピタリティやピット裏などで行われていました。つまり、我々メディアがライダーの元に行って取材をしていたのですね。

2025年を含むここ数年はシステムが変わり、メディアセンターや指定された場所で囲み取材が行われるようになりました。つまり、ライダーがその場所まで足を運んでくれています(ありがたいことです)。時間も、ドルナ・スポーツの担当者が各チームのプレスオフィサーと調整して、マネジメントしています。そうは言っても22名のライダーが1か所で一気に囲み取材を行うので、時間帯によっては複数名のライダーの囲み取材が同時に行われたりもします。

このような状況で悩ましいのが、「これを質問する」と決めていたライダーたちの英語の囲み取材が、同時に始まってしまう状況だったりします。仕方ないのですけどね。

オーストリアGPでは、現地に来ていたケーシー・ストーナーの囲み取材が特別に設けられた。これはメディアセンターで行われ、時間も長めだった。こうした特殊ケースもある©Eri Ito

オーストリアGPでは、現地に来ていたケーシー・ストーナーの囲み取材が特別に設けられた。これはメディアセンターで行われ、時間も長めだった。こうした特殊ケースもある©Eri Ito

わんこ連れの囲み取材!?

囲み取材はもちろんオフィシャルな取材の場ですが、例えば木曜日はまだ走行が始まっていないので、少しゆるやかな雰囲気です。イタリアGPでは、フランチェスコ・バニャイアが愛犬「Turbo(ターボ)」を連れて木曜日の囲み取材にやって来ました。そしてなんと、ターボもしっかりパドックに入るためのパスを取得していました!

アレイシ・エスパルガロやジャック・ミラーなどは、金曜日以降でも囲み取材に自分の子どもを同席させることもありました。エスパルガロのマックスくんはもう分別のつく頃なので、囲み取材に来ても、お父さんの仕事を後ろからじっと見守っていました。

片やミラーのピップ・フローレンスちゃんは、まだまだ目に映るすべてが気になるお年頃。イギリスGPの囲み取材ではミラーに抱っこされながら、目の前のテーブルに置かれたたくさんのレコーダーに興味津々で、手当たり次第、ボタンを押したり触ってみたりしていました。筆者のレコーダーもたまたま「STOP」ボタンが押されていたようで、囲み取材の録音が途中で切れた状態に……! その場にいた知り合いのイギリス人ジャーナリストが「わかってるわかってる」と苦笑いしながら、データをシェアしてくれました。

そんなエスパルガロやミラーですが、息子や娘がいても、囲み取材では「父親」の顔を見せることなくきっちりとMotoGPライダーの顔をしています。少し細かいかもしれませんが、さすが世界最高峰のプロフェッショナル・ライダーだなと感じるところでもあります。

2025年のイギリスGPと言えば、ファビオ・クアルタラロが決勝レースでトップを走りながらマシントラブルでリタイアを余儀なくされましたね。レース後、囲み取材でもクアルタラロは涙を流しました。わたしが囲み取材でこれほど感情をあふれさせるライダーを見たのは、初めてでした。囲み取材はオフィシャルな取材の場なので、激昂していたりひどく失望していたとしても、通常、ライダーは感情を整えてくるものだからです。クアルタラロが囲み取材で流したあの涙は、本当にまれなものだったと思います。それはつまり、それほどの苦悩があり、努力があり、優勝への渇望があった、ということなのでしょう。

囲み取材でも、そんなライダーのドラマが垣間見られるときがあるのです。

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