MotoGPの“裏側”を訪ねて|ドゥカティのホスピタリティ潜入。マルク&バニャイアの好きな日本食は……「寿司!」

MotoGPサンマリノGPで、ドゥカティのホスピタリティを取材しました。
伊藤英里 2025.09.24
誰でも

MotoGPの現場から、普段はなかなか見られない部分をお届けする「MotoGPの“裏側”を訪ねて」シリーズ。第5弾はドゥカティのホスピタリティをご紹介する。マルク・マルケスとフランチェスコ・バニャイアへの食事事情に関するQ&Aのほか、ドゥカティ・ホスピタリティ・マネージャーのエレナ・カソラリさんにもインタビューを行った。

サンマリノGPでドゥカティのホスピタリティを訪問

ホスピタリティとは、MotoGPのレースウイーク中にパドックに建てられる、各メーカーやチームの簡易施設のことである。レースウイーク中、チームのスタッフやライダーが食事をしたり、ミーティングをしたり、ゲストを迎えるのに使用される。一見すると立派な建物のようだが、すべて移動式だ。レースが終われば解体されて、次のサーキットへ向かい、またそのサーキットで設営される。

ヨーロッパは陸続きなので、ホスピタリティも転戦する。日本GPのようなフライアウェイでもホスピタリティ自体はあるけれど、ヨーロッパで見られる豪華なホスピタリティは、ヨーロッパで開催されるMotoGPならではのものだ。

今回は、サンマリノGPでドゥカティのホスピタリティを取材した。

ドゥカティのホスピタリティ©Eri Ito

ドゥカティのホスピタリティ©Eri Ito

©Eri Ito

©Eri Ito

ドゥカティのホスピタリティは、2階構成になっている。ドアをくぐるとレセプションがあり(通常、ホスピタリティは関係者や招かれたゲストしか利用できない)、フロアにはテーブルとイスが並び、その中央には食事を並べるテーブルがある。

ドゥカティのホスピタリティでは、基本的に木曜日のランチから日曜日のランチまで、食事が提供される。ドゥカティ・ホスピタリティ・マネージャーのエレナ・カソラリさんによれば、ホスピタリティではチームスタッフの全員とライダー、ライダーの家族、ゲストなどがランチやディナーをとるということだ。

フランチェスコ・バニャイアも木曜日から日曜日にかけてホスピタリティで食事をするが、土曜日のディナーだけは、自分のチームスタッフとともにアルパインスターズのホスピタリティで食事をする。これは数年前から始まったことだという。

マルク・マルケスの場合は、朝食は基本的にモーターホームでとる。ランチもほぼホスピタリティでは食べない。レースに集中するためだ。ただ、ディナーだけは毎日ホスピタリティで食べるのだという。こうした食事をとる場所を聞くだけでも、ライダーにとって大事なルーティンがあるのだとわかる。

ランチ時の撮影させていただいたので、テーブルセットがされている©Eri Ito

ランチ時の撮影させていただいたので、テーブルセットがされている©Eri Ito

テーブルの中央にはパンとグリッシーニが置かれている。イタリアンメーカーのドゥカティが提供する料理のメインは、もちろんイタリアン©Eri Ito

テーブルの中央にはパンとグリッシーニが置かれている。イタリアンメーカーのドゥカティが提供する料理のメインは、もちろんイタリアン©Eri Ito

ホスピタリティの中央のテーブルに料理が並ぶ©Eri Ito

ホスピタリティの中央のテーブルに料理が並ぶ©Eri Ito

サンマリノGPは愛犬とともにやって来たバニャイア。この写真の足元に愛犬がいる©Eri Ito

サンマリノGPは愛犬とともにやって来たバニャイア。この写真の足元に愛犬がいる©Eri Ito

モンスターの冷蔵庫。この付近にはソファがあって、ジジ・ダッリーニャなどが談笑していた©Eri Ito

モンスターの冷蔵庫。この付近にはソファがあって、ジジ・ダッリーニャなどが談笑していた©Eri Ito

Q&A:マルク・マルケスとフランチェスコ・バニャイアの食事事情

Q.
レースウイーク中、コンディション維持のために避けている食べ物や控えているものはありますか?

マルク・マルケス(以下、マルケス):
レースの週末はいつも、僕はだいたい同じものを食べる。ご飯をたくさん、鶏肉……それから水をたっぷり。僕にとってそれはもう「食事制限」というより、ただの習慣なんだ。レース前には食事のタイミングをきちんと管理しなきゃいけない。

食べる量にはあまり気を遣わない。大事なのはバランスのとれた食事をすること。特にバイクに乗る前と寝る前は、ちゃんと消化できているように気を付けているよ。

フランチェスコ・バニャイア(以下、バニャイア):
食事に関して、僕も決まったルーティンがある。ご飯と鶏肉はいつも週末のメニューに入っているんだ。例えば、朝食には卵白のオムレツと全粒粉のパンを少し。もちろん、重たい食事は避けている。特にソースがたっぷりかかったものはね。

レース前は食べるのがつらいときもある。あまりお腹が空かないんだ。量はあまり気にしないで、何を食べるかのほうにずっと気を配っているね。

Q.
レースウイーク以外でも、ダイエットをしていたり、食事制限をしていますか?

マルケス:
ダイエットというより、ごく普通の習慣だよ。食べるものはいつもバランスを意識しているし、行うトレーニングに合わせて少し調整しているね。例えば、きつい自転車トレーニングをやるとわかっているときは、炭水化物をしっかり摂るようにしているんだ。

バニャイア:
僕もほとんど同じ。トレーニングの日はすべてバランス重視で、魚や肉のグリル、野菜、ご飯、パスタ(でもソースなし)を食べている。週末にはちょっとしたご褒美を自分にあげることもあるけれど、体重は常にしっかり管理しているんだ。

Q.
本当は好きなのに、レースやトレーニングのために食べないようにしている食べ物はありますか?

マルケス:
僕はチョコレートが大好きなんだ。ときどき食べているけれど、自分でコントロールしなくちゃいけないよね。

バニャイア:
僕も「クロスタータ」というイタリアのデザートが好きなんだ。食べてはいるけれど、本当に特別なときだけだよ。

Q.
パーソナル栄養士など、栄養管理を手伝ってくれている人はいますか?

マルケス&バニャイア:
いないね。

Q.
通常、レースの何時間前に食事をしますか?

マルケス&バニャイア:
だいたいレースの2時間前に食べる。

Q.
ホスピタリティで提供される料理の中で、一番好きなものは何ですか?

マルケス:
シェフたちがイタリア人だから、ホスピタリティで出されるパスタはどの種類も本当に素晴らしいよ。

バニャイア:
僕たちは本当に恵まれていると思う。ホスピタリティの料理や食材の質は素晴らしいんだ。
例えば、僕は「タリアテッレ・アル・ラグー」が大好き。レースウイークには普通は食べられないけれどね。

Q.
ホスピタリティのシェフに特別な食事の要望はしていますか?

マルケス:
いや、特に何もないよ。

バニャイア:
僕の場合は、毎朝食べている卵白のオムレツだね。

Q.
もしあれば、好きな日本の食べ物を教えてください。

マルケス:
寿司が大好き! どんな種類の寿司でもね。

バニャイア:
僕も寿司が好きだよ。いろいろな種類の生魚がどれでも好きなんだ。それから、最近はラーメンにもハマっているね。

Q.
料理をすることはありますか? もし料理をするなら、あなたの得意料理は何ですか?

マルケス:
いや、家では料理はしないよ。毎日料理をしてくれる人がいて、僕たちが何を食べたいかもだいたいわかってくれているんだ。

ただ、なにもない週末にはバーベキューを楽しむことがあって、そのときは自分で肉を焼くのが好きだね。

バニャイア:
料理が大好きで、時間をかけるのも苦にならないんだ。むしろリラックスできるからね。ラグーのパスタを作るのが好きで、何時間も煮込むんだけれど、本当にいい仕上がりになるんだ。食材を買いに行くのも楽しみの一つだよ。

魚をオーブンで焼くのも得意。僕はとても好奇心旺盛だから、ネットでレシピを調べたりもするんだよ。

インタビュー:エレナ・カソラリさん

ドゥカティのホスピタリティ・マネージャーを務めるカソラリさんに、サンマリノGP木曜日にお話を伺った。カソラリさんは、ヨーロッパでのドゥカティ・ホスピタリティで主にゲスト対応の仕事を担当している。残念ながら日本GPには来ないということだが、日本食が大好きだそうで、「いつか休暇で日本に行けたら」と言っていた。

ドゥカティ・ホスピタリティ・マネージャーのエレナ・カソラリさん©Eri Ito

ドゥカティ・ホスピタリティ・マネージャーのエレナ・カソラリさん©Eri Ito

Q.
ドゥカティのホスピタリティの特徴を教えてください。

A.
ここに来れば、例えゲストであっても、チームのメンバーであっても、ライダーであっても、私たちはできる限り「自宅にいるように」感じてもらえるように努めています。

それから、私たちはイタリア人なので、基本的にはイタリア料理を作ります。ですが、海外にいるときには、その国の名物料理を作るようにもしていますよ。

マーケティングチームのオフィスや会議用のスペースが1階にあり、2階はメインスポンサーであるレノボ用です。レノボのゲストが来たときには、通常は彼らが上の階で食事をします。

ホスピタリティにはチーム全員、ライダーの家族やゲストがランチやディナーに来ます。ゲストが少ないときもあれば、多いときもあります。それはレースによって異なりますが、例えば、ここミサノでは、およそ300人のゲストがいます。多くの人であふれていたとしても、ここでみんなが快適に過ごせるように、私たちは最善を尽くしているんですよ。

Q.
ゲストの数はイタリアGP(ムジェロ)と同じくらいですか?

A.
今回に関しては、ムジェロよりも大変だと思います。というのも、通常はファクトリーやオフィスで働いている多くのドゥカティのスタッフが、この週末はこちらに来ているんです。明日(金曜日)、2台の新しいバイクの発表があるからですね。

(金曜日、ドゥカティはミサノ・サーキットのピットレーン上で「ディアベルV4 RS」と「ムルティストラーダV4 RS」を発表しました)

さらに、レース後の月曜日と火曜日にはテストがあります(※月曜日は公式テスト、火曜日はピレリタイヤのテスト)。そのため、ここにはより多くの人がいて、メカニックやエンジニアも、このテストのためにすでに今日から来ているんです。

Q.
ホスピタリティでは週末のいつからいつまで食事を提供しますか?

A.
木曜日の昼食から日曜日の昼食まで提供します。今週末は月曜日にテストがあるので、夕食も提供しますけどね。

ただ、レースの後にはすべてを片づけ始めるので、チームはここで食事をとりますが、ただ食べられるだけのとても簡易的な形になり、プラスチックの食器を使います。

Q.
ホスピタリティの構成を教えてください。

A.
ホスピタリティのスタッフは私を含めて合計で9人です。そのうち4人はトレーラーを運転します。

このホスピタリティは3台のトレーラーで構成されています。オフィス用のトレーラーが1台あり、もう1台はオフィスではありませんが、今は空の状態です。そして最後の1台がプロ仕様の厨房になっています。

さらに4台のトレーラーがありますが、それは部品などを収納するためだけに使っていて、今はサーキットから離れた場所に駐車されています。そしてそのトレーラーは、必要な物をすべて中に入れるために、日曜日の夜にだけパドックへ運び込みます。

彼らはサーキットにレースがあるさらに前の日曜日に到着します。月曜日の朝にはホスピタリティの設営を始め、水曜日までかけてホスピタリティを建てます。例えばテレビを設置したり、ビュッフェを準備したり、室内の家具をすべて配置したりするのです。

ようやく準備が整った水曜日にチームが到着します。キッチンはランチ用の料理を用意しますが、それはガレージで出されます。大きなトレーにパスタを載せて運ぶだけで、とても簡単なものです。そしてまた日曜日のレース後にすべてを解体するのです。

解体にはそれほど時間はかかりません。おそらく10時間ほどですみます。私たちはレース後にすぐ片づけを始め、同僚は夜中の1時ごろまで作業を続けます。ちなみに、ホスピタリティを設営、解体する際には、これを手伝うためにさらに4人が加わります。

Q.
週末は何種類の食事が並びますか?

A.
場合によりますが、通常は20種類くらいだと思います。ホットトレーには必ず2種類のパスタがあり、さらに2種類の肉や魚と野菜、あるいはメイン料理として肉2種類、または肉と魚、あるいは野菜と魚、といった具合です。

組み合わせ次第ですが、最初の2種類は必ずパスタです。なにしろ私たちはイタリア人ですからね。パスタなしでは生きられないんですよ!

あとは、チーズやサラダ、グリル野菜、モッツァレラやハム(プロシュート)といったものがありますね。内容も変わりますし、料理がなくなれば別のものになったりしますね。

こちらはサラダなどが並び、反対側にはパスタなど温かい料理が並べられる©Eri Ito

こちらはサラダなどが並び、反対側にはパスタなど温かい料理が並べられる©Eri Ito

©Eri Ito

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 ©Eri Ito

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この日はライスもラインアップに入っていた©Eri Ito

この日はライスもラインアップに入っていた©Eri Ito

©Eri Ito

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