「期待していなかった」アルガルベで金曜プラクティス10番手。小椋藍、Q2進出の理由は|MotoGP第21戦ポルトガルGP

現地取材をしたMotoGPポルトガルGPから、小椋藍選手の金曜日プラクティス10番手について書きました。
伊藤英里 2025.11.08
誰でも

MotoGP第21戦ポルトガルGPの金曜日プラクティスで、小椋藍が10番手に入った。今季4度目のQ2進出である。

その要因は何だったのか。

そして、土曜日と日曜日に向けて、さらに必要な改善とは。

久々のプラクティスでのトップ10に「うれしいですね」

小椋藍が、MotoGP第21戦ポルトガルGPのプラクティスで10番手に入り、Q2ダイレクト進出を決めた。Q2進出は、MotoGPのルーキシーズンである今季4度目。Q2にダイレクトで進むのは、今季3度目である。

じつは、木曜日の時点では、小椋はポルトガルGPに厳しい見解を示していた。コースのなかで「得意なところはほぼないです」と言う。

苦手なところは「最終コーナー」。これは2024年に話を聞いたときも言及していたコーナーで、アウトドローモ・インターナショナル・アルガルベを攻略するための、一つのカギになるコーナーだ。

「最終コーナー進入で下るところがあって、トラクションが一瞬抜けてしまい、周りよりも旋回を維持することができないんです。このためにずっとイン・イン・イン(のライン)で走る感じになってしまう。イン側のラインで走っていると(アウト側の)クリップを奥にとれないので、周りよりも立ち上がり重視のコーナリングにできなくて、メインストレート(のスピード)をすべて失う、というパターンが多かったんです」

最終コーナーのあとには、少し上って970mのメインストレートが続いている。最高速が出るメインストレートでいかに車速を伸ばすかは、最終コーナーの立ち上がりにかかっている。

「(MotoGPでも最終コーナーは)ポイントになるんじゃないかと思います。メインストレートがそのあとにありますから。最終コーナーをどう抜けていけるか、相当重要だと思いますね。このサーキットは、最終コーナーが速く回れるライダーが、強いイメージがあります」

実際のところ、これまでのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベと小椋の相性は、いいとは言えなかった。Moto3、Moto2クラス時代を振り返っても、最高位は2024年の5位である。

そんなサーキットを、MotoGPマシンで初めて走ったポルトガルGPの金曜日、小椋はプラクティスでトップ10入りを果たしたのだ。

この日はころころと天候が目まぐるしく変わる、落ち着かないコンディションだった。朝のうちは晴れていたのだが、次第に重たい雲が空を覆い、午前中に行われたMotoGPクラスのフリープラクティス1ではレッドクロスのフラッグが提示された。雨量はまったく多くはなかったが、その後もアルガルベの天気は気まぐれに青空を見せては分厚い雲で覆い隠し、ぱらりと雨粒を落とした。そのたびに、セッションではレッドクロスのフラッグが振られた。

MotoGPクラスのプラクティスでもレッドクロスのフラッグが振られたタイミングがあり、雨が降ったりやんだりしていたが、やはり雨量は多くはなく、雨がやめば路面コンディションはすぐにドライになるという状況だった。小椋がアタックしたタイミングでは、完全なドライコンディションだったという。

小椋は、セッション終盤、3回目のコースインでトップのアレックス・マルケスから0.469秒差の1分38秒443を記録。これが自己ベストタイムとなった。

「昨日の段階では自分がどの位置を走るのかわからない状態だったので、あまり期待していなかったのですが、ほかのサーキットに比べたら、いい形で金曜日を終えられたので、そこはよかったですね」

では、小椋がトップ10に入ることができた要因は、何だったのだろうか。一つには、課題としていた最終コーナーの改善がある。

「最終コーナーはMoto3、Moto2クラスのほうが苦労していました。(今季は)MotoGPマシンになって、オートバイが助けてくれるところが大きいです。周りのライダーとの差がなくなったので、そこはよかったです」

もちろん、MotoGPルーキーである小椋にとって、MotoGPマシンでのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベは初走行であるため、他に改善点は残る。セクター2だ。セクター2は、3コーナーと4コーナーの間から、右の8コーナーを立ち上がった先の区間である。

「セクター2はいろいろな要素があって、コーナーも多いです。ブレーキングを改善したらよくなるというわけでもないし、ブレーキングを改善しなきゃいけないコーナーもあれば、立ち上がりを改善しなきゃいけないコーナーもある」

「4コーナーの立ち上がりでロスしていますし、5コーナーのブレーキングで、もう少し突っ込める。そのあとの二つの右コーナー(7、8コーナー)でも、まだスピードを残せる……など、いろいろです。セクター2に関しては明日、やることが多いです。でも、改善すべきところはわかっています」

また、コンディションについて、懸念事項もある。降ったりやんだりしていた雨は、夕方についに本降りとなり、路面がフルウエットとなった。土曜日の天気は悪くなさそうなので路面は乾くだろうが、コンディションは金曜日から変わっているだろう。

といっても、小椋が手ごたえをつかんで金曜日を終えたことは確かだ。これまで結果を残すことができなかったサーキットでの結果に、本人も「(この10番手は自分にとって)大きいです。うれしいですね」と素直に認めていた。

レース後半にかけてのマネジメントに長ける小椋だけに、グリッド次第ではトップ10圏内、あるいはそれ以上の結果に期待が持てるだろう。まずはQ2の順位がカギとなる。

こちらは木曜日の囲み取材の様子。走行が始まる前だからか、少しリラックスした表情も見せる©Eri Ito

こちらは木曜日の囲み取材の様子。走行が始まる前だからか、少しリラックスした表情も見せる©Eri Ito

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